暮らしの中の神事
神社とおまつり
神社でおまつりされる神さまについて
山形の神社におまつりされている神さまは、地域の人々から崇敬され、親しみを込めて「○○さま」や「○○さん」とお呼びすることがあります。その一例をご紹介します。
神明さま(神明神社・神明社・神明宮)
伊勢の神宮でまつられている天照大御神(アマテラスオオカミ)を各地におまつりする神社です。天照大御神をおまつりする神社としては他に、大神宮・伊勢神社・天祖神社などがあります。また神明という言葉は、広く神さまを意味する場合もあります。
お稲荷さま(稲荷神社・稲荷)
お稲荷さまは主に宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ)をおまつりする神社です。「稲荷」の語源は諸説ありますが、イネナリ(稲成)という意味で、稲の生成化育する神様を表しているとも言わてます。もともとは農業の神様でしたが、今は広く商業・産業を守護する神さまとされています。
八幡さま(八幡神社・八幡宮)
八幡さまは、応神天皇(第十五代天皇)・神功皇后をはじめとする神さまたちをおまつりする神社です。京都府の石清水八幡宮では源義家が元服をし、「八幡太郎」と称するなど源氏の篤い崇敬を受けました。さらに源頼朝により鎌倉幕府が開かれてからは、鶴岡八幡宮への信仰が高まり、武家の守護神として各地にお祭りされるようになったのです。
天神さま(天神社・天満宮)
天神さまは、菅原道真公をおまつりする神社です。道真公は平安時代の学者で、右大臣まで務めましたが、現在の福岡県太宰府市に左遷され、59歳のときに亡くなりました。やがてその墓所が整えられ、現在の太宰府天満宮となったのです。道真公は英知に秀でていたことから、学問の神さまとして信仰を集めています。
住吉さま(住吉神社・住吉社)
住吉さまは、伊邪那岐命が禊(みそぎ)をおこなった際に生まれた・底筒之男命(そこつつのおのみこと)・中筒之男命(なかつつのおのみこと)・表筒之男命(うわつつのおのみこと)をおまつりする神社です。時には神功皇后もおまつりされています。海上安全守護の神さまとして、海にまつわる漁業・水にまつわる農耕の神さまとして、また和歌の神さまとしても広く信仰されています。
お諏訪さま(諏訪神社)
お諏訪さまは、建御名方神(たけみなかたのかみ)をおまつりする神社で、お妃である八坂刀売神(やさかとめのかみ)もおまつりされる場合もあります。中世には武勇の神として武家の崇敬を集めました。また風雨の神、鍛冶の神、農耕・狩猟・開拓の守護神といった幅広い御神格を有し、後世、諏訪神社は信濃国のみならず各地に奉祀され、庶民からも篤く信仰されるようになったのです。
神宮と神社
現在、単に「神宮」といえば、伊勢の神宮を示す正式名称として用いられています。また「○○神宮」の社号を付されている神社には、皇祖(こうそ)をお祀りしている霧島神宮や鹿児島神宮、また天皇をお祀りしている平安神宮や明治神宮などがあります。このほか、石上(いそのかみ)神宮や鹿島神宮・香取神宮など特定の神社に限られています。これに対して「神社」は、その略称である「社」とともに一般の神社に対する社号として広く用いられています。また、「宮」や「大社」などの社号もあり、「宮」は天皇や皇族をお祀りしている神社や由緒により古くから呼称として用いられている神社に使われます。「大社」はもともと、天孫(てんそん)に国譲りをおこない、多大な功績をあげた大国主命(おおくにぬしのみこと)を祀る出雲大社を示す社号として用いられてきました。しかし、現在「大社」は、広く崇敬を集める神社でも使われています。
社殿(しゃでん)
それぞれの神社で、社殿の形式が異なり細部の違いは多岐にわたりますが、大きくみてその様式を二つに分けることができ、一つは高床式の穀物蔵の形から発達した「神明造(シンメイヅクリ)」であり、もう一つは古代の住居の形から発達した「大社造(タイシャヅクリ)」となっています。「神明造」とは、伊勢の神宮を代表としてみられる様式で、切妻(きりづま)造の屋根(棟を境に本を開いたように屋根が両側に流れている)の棟と平行の「平」側に入口がある平入(ひらいり)という形になっています。この神明造から派生したものとして、前面が長くのびて参拝者のためのひさしとなっている「流造」や、切妻平入の建物が二棟連結している「八幡造」などがあります。もう一つの「大社造」は、出雲大社に代表される様式であり、切妻造の屋根の「妻」が正面に見えるほうに入口があるため、妻入(つまいり)といいます。この「大社造」の流を汲むのが、住吉大社の「住吉造」や春日大社の「春日造」です。このほか、本殿・幣殿・拝殿が連結した構造で、屋根の棟数が多く複雑になっている「権現造」、拝殿の上に流造の本殿が乗り、重層構造となっている「浅間造」など、地域や信仰により社殿形式はさまざまです。
鳥居について
鳥居は神社の神聖さを象徴する建造物ともいえます。神社の内と外を分ける境に立てられ、鳥居の内には神様がお鎮まりになる御神域として尊ばれます。また、特定の神殿を持たず、山など自然物を御神体または依代(よりしろ)としてお祀りしている神社の中には、その前に鳥居が立てられ、神様の御存在を現しています。起源については、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が天の岩屋にお隠れになった際に、八百万の神々が鶏を鳴せましたが、このとき鶏が止まった木を鳥居の起源である説など諸説あります。その材質・構造も多種多様で、それぞれ形態が異なります。代表的なものとしては、鳥居上部の横柱が一直線になっている神明(しんめい)鳥居と、この横柱の両端が上向きに反っている明神(みょうじん)鳥居があります。このほか、山王(さんのう)鳥居や、稲荷鳥居など特徴的なものがあります。
狛犬
参道の両脇に一対で置かれた石製の狛犬を見かけます。鳥居と並び狛犬は神社にとって一般的なものとなっています。石製のものを多く目にしますが、このほかに、社殿内に置かれる木製や陶製のもの、また金属製のものなどがあります。狛犬は高麗犬の意味で、獅子とともに一対になって置かれているとする説もあり、その起源も名称が示すように渡来の信仰に基づくもので、邪気を祓(はらう)意味があるといわれています。神社によっては狛犬ではなく、狐や牛などの場合もあります。狐は稲荷神社、牛は天満宮に見られ、共にお祀りされている神様のお使いであるとされてます。神社や地域によって表情が多様なので、神社を訪れた際に、いろいろな狛犬を眺めることもお参りをする楽しみの一つになるのではないでしょうか。
恒例祭について
神社で行われる毎年のお祭りには、例祭の外、歳旦祭、元始祭、 祈年祭、紀元祭、昭和祭、神嘗奉祝祭、明治祭、新嘗祭、天長祭などがあります。この他にも、毎月行われる月次祭や毎日行われる日供祭、それぞれの神社に縁のあるお祭りも行われています。
例祭
神社鎮座の日やご祭神に特に縁の深い日に行われるお祭りで、それぞれの神社にとって最も重要なお祭りで、大祭にあたります。
歳旦祭
新年を祝い皇室の弥栄と国の益々の発展を祈るとともに、氏子崇敬者と地域社会の平和と繁栄を祈り元旦に行われるお祭りで、中祭にあたります。
元始祭
年頭にあたり天皇陛下の弥栄と国の益々の発展を祈り1月3日に行われるお祭りで、中祭にあたります。戦前は祭日の一つでした。
紀元祭
神武天皇が即位した建国の日・2月11日に際して、皇室の繁栄と国の益々の発展を祈るお祭りで、中祭にあたります。
祈年祭
皇室の弥栄と国家・国民の一年の安泰を祈り2月17日に行われるお祭りで、大祭にあたります。我々の主食である米(稲)の豊穣をはじめあらゆる産業の発展、国力の充実が祈られます。
天長祭
天皇陛下のお誕生日である2月23日に際して行われるお祭りで、奉祝の意を表すと共に、陛下の長寿と益々のご健康を祈るお祭りで、中祭にあたります。
昭和祭
昭和天皇の誕生日である4月29日に際して、我が国にとって未曾有の大戦を経て我が国を復興、発展に導かれた昭和天皇の大業を称え、皇室の弥栄と国の益々の発展、そして文化の振興と産業の増進、永遠の平和を祈るお祭りで、中祭にあたります。
神嘗奉祝祭
10月17日、皇室のご祖先である天照大御神にその年の新穀を奉る神嘗祭が伊勢の神宮で行われるに際して、各神社で行う奉祝のお祭りで、中祭にあたります。戦前は祭日の一つでした。
明治祭
明治天皇の誕生日である11月3日に際して、我が国を近代国家としての発展に導かれた明治天皇の大業を称え、皇室の弥栄と国の益々の発展、そして文化の振興と産業の増進、永遠の平和を祈るお祭りで、中祭にあたります。
新嘗祭
皇室の弥栄と国家・国民の安泰を祈り11月23日に行われるお祭りです。宮中では天皇陛下が天照大御神をはじめ神々に新穀をお供えし、御自身もお召し上がりになります。これにあわせて全国の神社で新穀の収穫を感謝するお祭りが行われるのです。
月次祭
月ごとの決まった日に行われるお祭りで、皇室の弥栄と国の繁栄、地域と氏子崇敬者の安寧を祈るお祭りで、小祭にあたります。